WARIKIRI英語クロニクル

英検1級・TOEIC960のihissangが東大・京大・灘高校の入試問題をひたすら解きます。単語レベルはアルクのSVL(究極の英単語)を基準にしています。

東大 2015年度入試問題(第1問)

2015年度〔1〕‐(A)

年度 問題 形式 内容 ジャンル 単語数 語彙レベル readability 難易度
95% 97% AVR ARI CLI
2015年 第1問 〈A〉 要約 直感による危険認知 説明文 心理学   347 6,000 7,000 2.0 14.0 11.9    A

※単語数は空欄を補充して文章を完成させたときの単語数。語彙レベルのAVRは、アルクのSVLを基準に、当該長文に出てきた総単語の平均レベル。95%、97%とあるのは長文中の全ての単語を難易度順に並べたときに、簡単な単語から95%の単語レベルと、97%の単語レベルを示しています。つまり、本問では、SVLで6000語レベルであれば、この長文の95%の単語を知っていたことを意味します。readabilityは、ネットで文章の難易度を測定できるサイトがあったので測定しました。難易度は実際に英文を読んで、ihissangの独断できめました。簡単な順に、AA→A→B→B+→C→D。過去50年分を相対的に判断したいので、難易度評価は後で変わるかもしれません。

❐内容

   本問350字程度の英文を70字~80字の日本語に要約する問題です。昔、東大受けたときは英文読解の精度が低かったので、「なんとなく」要約していた記憶がある。今なら、英文をきっちり理解した上で、論理構成を考えて要約しますよ。本問の英文自体は非常に簡単ですが、要約となると難しい。英文の論理の流れがつかみにくく、筆者が「言いたいこと」が分かりにくかった。

 

英文は最初と最後に結論が書かれていることが多い。paragraph 1の内容をざっとまとめると、「リスク認知という学問分野の発展によって経済学でいうホモ・エコノミクスという人間像が揺らいでいる。ミクロ経済学の世界では、人間はみずからの効用を最大にするための合理的な判断に基づく経済活動を行うことを前提とするけれど、実際には人間は危険判断をするとき理性と直感に基づく判断をしていますよと。」

paragraph 2では、直感による危険認知の発達と限界を書いてる。直感による危険認知はや野生動物や戦争で身を守るのに役立った。もちろん今でも交通事故とかから身を守るのに役立つが、放射能のように「目に見えない危険」を認知することはできない。

paragraph 3では、現代社会の「目に見える危険」に対しても、直観によるリスク認知に限界があることを具体的に説明している。「直観によるリスク認知」は野生動物から逃げるのに役に立った。しかし、自動車やたばこなどある種類の客観的に危険な物に対しては、その危険性を(理性では)認識していても、恐怖心を抱かない(つまり本能による危険認識が機能しない)。これは、この種の危険に対する危険認知は進化が追いつかなかったためである。

さらに、たばことの比較でガラガラ蛇の実験をしている。ガラガラ蛇はケースの中にいて「客観的には安全」にも関わらず、これを認識すると「直観によるリスク認知」の働きで恐怖心が生まれた。これを”Even Charles Darwin failed to break the amygdala's iron grip on risk perception.”と表現している。つまり、「客観的には安全」な物に対して扁桃体が脳を支配して危険と判断してこれを避けようとしている。

 paragraph 4はわかりにくいなあ。空を飛ぶ恐怖を乗り越えて産業が発達したというのはわかる。飛行機嫌いのビジネスマンが渋々海外出張で飛行機に乗って、大きな取引をしていると。けど年間500人しかいない飛行機事故にはビビっていながら、なんで交通事故の死者が年間100万人いるのに、車で買い物行くときはビビッてないの?おかしいやないかと。客観的は危険でないのに、「飛行機」を危険と認識して何とか恐怖感を克服した。けど、客観的には「飛行機」よりも危険な「自動車」を危険と認識していない。直感によるリスク認知がまったく機能せず、理性的な判断をしていないと。 

 

  理性(客観) 直感 反応
タバコ 危険 安全 不合理(平気)
ヘビ 安全 危険 不合理(恐怖)
飛行機 安全 危険 不合理(恐怖)
自動車 危険 安全 不合理(平気)


  要するに、第一段落で、「人間は必ずしも合理的判断をしない。理性だけではなくこれと矛盾する直感に基ずく判断をするからである」と結論を述べる。第2段落で、「直観によるリスク認知」の説明。第3段落、第4段落で人間が合理的判断をしていない例とその理由をあげている。これをまとめる。
 

❐ ihissangの解答

人間は、理性だけではなく、直感に基づく判断をする。このとき、認識した客観的危険性と直感による危険判断とに矛盾が生じるために、不合理な判断をすることがある。(76字)

 

 

❐単語・イディオム

paragraph 1  

perception:認識

 homo economicus:経済人、ホモ・エコノミクス(経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動すると想定した人間像。そういえば大学でミクロ経済をやったときにでてきた。

 gauge: ~を測定する(to measure sth accurately using a special instrument)
◇ gut: ①腸、内臓 ②本能的な、直感の(based on feelings and emotions rather than thought and reason)’the head’との対応関係を考えると'the gut'は「はら」とかになるのかなあ。頭が知性とか論理を象徴するのはわかるけど、内臓が直感を象徴するのはピンとこない。

paragraph 2 

◇ take over:いろいろ意味がある。

① He took over the business (from his father).⇒引き継ぐ

② Please take this cake over to your mother’s house.⇒~に持っておく

③Tourists really take over this island in the summer.⇒占領する

④ A democratic government took over under this President.⇒優勢となる

ここでは④の意味。”Letting the amygdala (in the brain's emotional core) take over at the first sign of danger,‥”は「危険を認知すると脳内で扁桃体が優勢となる。」ということ。

◇ millisecond:ミリ・セカンド(1/1000秒)

◇ spear:やり

 adaptation:適応(形態)

 

paragraph 3

◇  iron grip:強力な支配 

 

paragraph  4

" A whole industry has developed around conquering the fear of flying"が分かりにくいなあ。このaroundは 「〈問題・困難・苦境などを〉避けて,切り抜けて,克服して」。だから「産業全体が空を飛ぶ恐怖を克服して発展した。」となる。

 ex)There should be a way around this problem.(この問題を克服する方法があるはずだ。)